日本切手ノート (16)      14.12.27

★ 「真の未使用」と「輸出用未使用」

 世界のクラシック切手で、日本程未使用切手の残っている所はない。
 日本が最初に切手を発行した1871年の頃には、既に切手を集める趣味が欧米で
流行していた。この為、海外の切手商は新たに切手を発行し始めた日本の政府に
それを注文する事になる。こうして、手彫切手のシートが海を渡り、未使用のままで切
手商や蒐集家の手元に残っていたのである。
 シートで海を渡ったといっても、数シート、或はそれ以下しか輸出されなかった物もあれ
ば、数十シート、いや、それ以上で送られた物もある。ここにお見せする塊は、その極
少量と思われる輸出された切手で、未使用は1枚でも珍とされている。

 
 
 左の洋桜黄2銭「ワ」の田型は、現在2個が知られている。元々2×4の8枚群だった
が、戦後里帰りした後、2個の田型に切断された物である。この仮名で他にこれほど
綺麗な単片を見ない事もあって、半シートか1シートで輸出されたのであろう。単片で見
掛ける殆どのこの仮名の未使用は「真の未使用」と呼ばれ、国内で使われないで残
っていた切手なので、どうしても海外にあった切手とは状態の点で見劣りがする。
(「真の未使用」とは、蒐集家用に輸出されて残っていた切手、実用の為に買い置きし
ていた切手の使い残り、郵便局で売れ残っていた切手等の事をいう。)
 右の切手は和桜黄2銭10版の2番〜35番までの9枚群である。この塊は元々10枚
群だったのだが、26番切手が欠けている。聞く所にによると、この塊は6枚と4枚に分
割された後、4枚の所持者が(多分切手商)1枚だけ切り離して売ったのであろう。ひょ
っとすると大きなエラーがあったかも知れない。この、所謂タイプUのシートは3面が確認
されていて、識者の間では9・10・11版と呼ばれている。シートの復元再構成はまだの
ようだが、この塊は位置が定まっている。3番切手の左銭字の小点が無いエラーで、こ
れを含む再構成のシートが10版とされている。
 この黄2銭Uの3シートの区別は今の所難しいのだが、どのシートかとを言わなければ
大きな塊が数個記録されている。故人になられたが東京の有名切手商から20枚群
があったと聞いた事がある。これは後で述べる10枚群2個になったのかも知れない。
ついでは、「桜切手」に採用されている右耳付15枚群である。在京の切手商で10枚
群を持っていて、家宝にしたいと言っている人が居る。この10枚群と右の9枚群が前
述の20枚群かも知れない。9枚群は現在6枚群と3枚群に分かれているのだが、画像
の上だけで再会させる事にする。これらの塊は多分同じ版(10版)であろう。10枚群と
15枚群の版を確認出来ない現在だが、この推測が正しいとすると、3面のタイプUが
復元され、未使用の数が確認されたら、9版と11版の未使用(特に11版)は入手に苦
労するかも知れない。未使用の無さ加減からすると9版と11版は「真の未使用」10版
は極少数の輸出シートからとの説が有力になるかも知れない。


ご意見・ご感想は当社まで メール でお願い致します。 目次へ