第二部・日独戦争と俘虜郵便の時代 79 05.07.25 |
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09) 日独戦争の俘虜郵便 |
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軍事郵便・俘虜郵便収集の大家として知られている大西二郎氏の研究によれば、 戦後の郵趣界で最初に“日独戦争の俘虜郵便”を取上げたのは、“消印とエンタイ ヤ”である。 小林盛雄氏(38号・昭和25年10月)、江口彪一郎氏(57号・昭和27年5月)、その他 小林芳一氏、和田文平氏等の同誌への報告も記録されている。また、“切手趣味” では、吉田利一氏の報告(43号・昭和31年7月)がある。その後も数多くの収集家に よりデータ発表があったようだが、いずれも断片的なデータ報告にとどまっている。 |
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図291 |
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本邦最初の本格的な文献は、“ドイツ俘虜の郵便 1914−1920”(吉田景保氏訳・ 補注、昭和53年・駅逓郵趣会)であろう。これは、1964年(昭和39年10月)にドイツで 発刊されたルーファー、ルンガス両氏の“青島ドイツ俘虜郵便ハンドブック” (“Handbuch der Kriegsgefangenenpost Tsingtau” Helmut Ruefer &Wolf Rungas) (図291)から日本関連部分を抜粋翻訳したもので、吉田氏独自の解説も付け加え られている。(原本では、中国、シベリア、オーストラリア等のドイツ俘虜の郵便にも 言及している)この文献の登場と前後して、膨大なルーファーコレクション等のまとま った収集品が市場に相次いで放出され、日本にもその多くが里帰りし、金井スタン プ商会など有力切手商を通して郵趣界へ浸透していった。幻といわれた板東収容 所切手のフルシートの登場などは、ご記憶の方も多いのではないだろうか。 ルーファーコレクションの核となっていたのは、ルーファー氏の叔父ランドグラフ (Wilhelm Landgraf・クルップ社東京支店)の書簡集であった。大正当時、民間人とし て在日していたランドグラフは、ドレンクハーン(Hans Drenckhahn・ジーメンス社東 京支店)等とともに、在日ドイツ俘虜の救済義捐活動に積極的に取組んでおり、各 地多数のドイツ俘虜と郵便物を交換していた。それらの書簡集が戦後ルーファー氏 に継承され、本格的な分類収集が始ったとされている。 |
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図292 |
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図292は、ヴェルサイユ条約締結後の大正8年7月18日、習志野収容所の俘虜ブ レムザー(Willi Bremser・MK・海軍砲兵中隊)より東京赤坂のランドグラフへ宛てら れた手紙で、本人の履歴書とともに、戦後解放後の青島での就職活動への協力を 懇願する内容の手紙が添えられている。ブレムザーは1913年(大正2年)10月に青 島で結婚しており、妻エリーゼが青島に留まっていたからである。戦後解放時にお いて、特殊事情を有し就職先が決まった者は青島への帰還残留が許されている。 俘虜郵便収集における各収容所の基本分類は、「開設時期による分類」、「統合・ 閉鎖などを考慮した地域的分類」、「文献:ルーファー&ルンガス本の分類」等、研 究者により様々な分類がなされてきた。日本の郵趣界で一般的に利用されてきた 分類は、“ルーファー&ルンガス本”の分類であり、収容所名順(ABC順)を採用し ている。しかし、実際に収集分類してみると、収容所統廃合の関係上、時系列分類・ 地域的分類を複合して考えないと分類に合理性を欠いたものになってしまう。俘虜 郵便収集の分類は、収集家個人がこれらを考慮した上で決めれば良いと思うが、 参考として収容所の開閉表を挙げておく。 (たとえば“ルーファー&ルンガス本”の分類では、久留米高良台支所を独立した 収容所と分類し、翻訳版では名称も高良内と誤記されている。共に近隣の地名だ が収容所があったのは高良台“こうらだい”、その東にあったのが高良内“こうらう ち”。また、久留米バラック収容所も独立した項目をとっている。他に東京収容所を 浅草収容所と表記している。等) (収容所開設・閉鎖)
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