第二部・日独戦争と俘虜郵便の時代 62      04.06.29

02) 俘虜情報局(その2)

 大正3年11月5日、俘虜情報局から陸軍大臣(岡市之助)へ「俘虜情報局執務状況
ノ件報告」(欧受第1345号、俘発第65号)が提出されている。この中で郵便に関する
項目として「4.郵便物及俘虜救恤品ノ免税」が述べられている。これは、俘虜郵便
規則第四条を実務的にしたもので、陸軍省や逓信省だけでなく、その他関係各省
及び民間船舶会社などの協力も求めている。青島陥落とともに、多数のドイツ俘虜
の日本送致が予想される時期でもあり、陸軍省主導で速やかにこれらの協力体制
を整える必要があった。


(4.郵便物及俘虜救恤品ノ免税)
 情報局及俘虜ノ發受スル一切ノ郵便物ハ其郵税ヲ、又俘虜ニ宛テタル贈與及救
恤品ハ國有鐵道ノ運賃及輸入税ヲ免除セラルヘキハ國際法ノ規定ニテ既ニ日露戦
役ニ於テモ其實施ヲ見タル所ナリト雖、時勢ニ伴フ取扱法ノ改正ヲ顧慮シ九月二十
七日逓信省、大蔵省及鐵道院等ニ對シ交渉ヲ開始セリ又右ノ物件ハ發送者及俘虜
ノ収容地ニ依リ其輸送ヲ鐵道ニ依ルノ外更ニ舩舶ノ輸送ニ籍ラサルヘカラサルコト
アルヘキヲ顧慮シ逓信省ヲ經テ郵舩(日本郵船)、東洋汽舩、大阪商舩等ノ各會社
ニ交渉セリ

 俘虜郵便規則では、“俘虜郵便”の定義として、(1)“俘虜情報局”発受の公的俘
虜郵便、(2)俘虜の発受する私的俘虜郵便、の二つのグループに分けている事は
前回述べた。ここでは、俘虜事務に関し俘虜情報局の発信した公的俘虜郵便、ま
た、俘虜情報局が中継・検閲した俘虜発受の私的俘虜郵便も含め、俘虜情報局が
取扱った“俘虜郵便物”からその活動状況の一部を紹介したい。

 俘虜情報局の取扱った俘虜郵便物では、様々な俘虜情報局の郵便検閲印、郵便
封緘紙等を見ることが出来る。使用時期等のデータは、現時点で筆者現物確認済
のものによる。
 注目したいのは、検閲印、封緘紙とも使用言語の組合せが各種あることである。
日本語は勿論だが、ドイツ俘虜を意識したドイツ語、国際公用語としてのフランス
語、実務的準公用語の英語、なども見ることが出来る。取扱い対象の違いで使分け
たのか、何か他の理由があったのかは非常に興味あるところだが、現時点では断
定を避けたい。

・郵便検閲印


図234 初期型・筆者確認使用例
大正3年12月〜4年5月・日独語
図235 初期型・筆者確認使用例
大正4年4月・日語


図236 中期型
推定・大正5年〜・日英語
図237 後期型・筆者確認使用例
大正8年3月〜9年1月・日語

注:中期にもう一種の検閲印の記録があるが、筆者現物未確認

・郵便封緘紙


図238 初期型・筆者確認使用例
大正3年12月・独語 SIEGELMARKE

第一部・図125参照
図239 中期型・筆者確認使用例
大正4年7月〜5年7月・日語

図240 後期型・筆者確認使用例
大正6年2月〜8年5月・日仏語

・俘虜情報局事務用証印

図241 筆者確認使用例
大正6年7月

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