日独戦争と俘虜郵便の時代 51 04.02.02 |
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26) 軍事郵便証票・青島軍事(その1) |
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明治43年(1910年)12月1日より、従来の無料軍事郵便制度に制限を加える事に なり、逓信省令第108号(明治43年11月10日)に依って新たな軍事郵便制度が施行 される事になった。無料軍事郵便は原則廃止となる中、主に日露戦争後の朝鮮・中 国駐屯軍の下士兵卒に便宜を図る為に、軍事郵便証票(軍事切手・3銭)の使用が 開始された。(同12月1日、菊切手赤3銭に「軍事」と加刷された軍事郵便証票を発 行、一人に付月2通まで、第一種便に限定) その後もこの制度は続けられているが、通常切手の図案変更により台切手は菊 切手3銭から田沢切手3銭に変更され、「軍事」加刷のバラエティを含む製造面の分 類、使用例の研究等、多くの収集家を惹きつけている。 |
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日独戦争の無料軍事郵便制度(明治39年2月勅令第19号に依る)は、大正3年 (1914年)8月27日(逓信省告示第521号)より始まっている。告示には、「今回ノ事變 ニ關セサル地域ノ軍事郵便ハ従来ノ儘之カ取扱ヲ継續ス」と追記され、無料軍事郵 便制度の適用地域を山東の該当地域に限定し、他地域(朝鮮・満州・山東以外の 中国等)では軍事郵便証票の使用を継続している。 戦後統治の青島守備軍管内では引続き無料軍事郵便制度が適用されていたが、 大正10年4月1日より同地域でも軍事郵便証票の使用が開始される事となった。 「青島守備軍管内軍事郵便取扱制限ノ件」(郵第961号・大正10年3月23日) 通牒 陸軍次官殿 青島守備軍管内ニ發着スル軍事郵便ハ來四月一日ヨリ明治四十三年十一月逓 信省令第百八號ニ依ル取扱範圍ニ制限シ別紙甲號寫ノ通告示スルト共ニ大正三 年八月逓信省告示第五百二十一號中別紙乙號寫ノ通改正致候條御了知相成度 逓信次官 甲:逓信省告示第四三〇號 大正十年三月三十一日限青島守備軍管内ニ發着スル軍事郵便物ハ明治四十三 年十一月逓信省令第百八號ニ依ルモノヲ除クノ他之カ取扱ヲ廢止ス 大正十年 三月二十三日 逓信大臣 乙:逓信省告示第四三一號 大正三年八月逓信省告示第五百二十一號中「山東」ヲ削リ來四月一日ヨリ之ヲ施 行ス 大正十年三月二十三日 逓信大臣 |
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図200 |
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大正10年3月23日、軍事郵便取扱制限(軍事郵便証票の使用開始)に関する通牒 (郵第961号)及び逓信省告示(第430,431号)が通達され、陸軍省は3月26日に受領 している。また、同日付で青島守備軍公報にも(図200 布令第21号)として、軍事郵 便取扱制限の告示がだされている。 4月1日に施行するのであれば、3月末時点で青島郵便局(所澤町)に軍事郵便証 票が準備されていなければならないが、実際には逓信省からの送付は施行日には 間に合わず、青島郵便局で臨時の軍事郵便証票が急遽製造され、各守備隊に交 付されたと考えられている。山東各局で通常使用されていた第1種便料金・支那加 刷3銭切手(図201)を利用し、手押しにて“軍事”加捺を為した臨時軍事郵便証票、 いわゆる“青島軍事”(図202)が誕生したのである。 |
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明治43年12月1日、初めて軍事郵便証票(菊軍事切手)の使用が開始された時 は、その3週間前の11月10日に逓信省令第108号が発せられており、軍事郵便証票 を使用該当地域に送付する時間的余裕も考慮されたと考えられる。逓信省は本来 戦後の駐屯軍に対しては無料軍事郵便制度廃止を要求していたが、陸軍省に譲歩 した形でこの軍事郵便証票の使用を認めている。逓信省としては一刻も早く軍事郵 便証票の使用を開始したかったはずで、“軍事加刷”作業や該当地域への送付等、 逓信省の事前準備が施行日に遅延しないよう周到に行われたであろう事は想像が つく。 一方、山東では、逓信省からの軍事郵便証票の送付が施行日に間に合わなかっ た。逓信省としては、軍事郵便証票の製造工程は既に存在していたので、新たに “軍事加刷”作業をしたとしても準備期間は施行日に合わせ逆算できたはずであ る。また、青島守備軍管内の軍事郵便取扱制限は逓信省の独断で決めたとは考え にくく、当然陸軍省と事前協議をもち、3月23日の通牒(郵第961号)以前に逓信省 は準備を始めていたと考えるのが妥当であろう。敢えて送付遅延の理由を考えて みるならば、(1)単純に軍事郵便取扱制限の逓信省の決定が施行予定日に近す ぎた。(2)逓信省が陸軍省(3月23日の通牒への)の承認を待った。(3)軍事郵便証 票の製造工程でトラブルがあった。(4)輸送上(陸路・船便)の遅延。特に3月下旬 は山東でも肺ペストの流行で運輸関連検疫の厳しい時期でもあった。等が考えられ るが、どれも説得力のあるものではない。正規軍事郵便証票(田沢・旧毛紙軍事) は、同年5月中には青島郵便局に到着したようだが、現時点では、逓信省、陸軍 省、青島守備軍のいずれの公文書にも“青島軍事”“遅延した正規版の送付”につ いての関連資料は見つかっていないのである。 |
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